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君死にたまふことなかれ   (現代訳)

2019/ 08/ 20
                 
引用から)
ああ弟よ、君のために泣いている。
君が死んでくれることがあってはならない。
末に生まれた君なんだから
親の愛情は強かっただろう。
親は刃をにぎらせて
人を殺せと教えたか?
人を殺して死ねと言って
二十四歳までを育てたか?
堺の街の商人の
旧家であることをほこる家の主人で
親の名を継ぐ君なのだから、
君が死んでくれることがあってはならない。
旅順の城は滅んでも、
滅ばなくても、何て事はない。
君は知らないだろうが、商人の
家の掟にそんなものは無い。
君が死んでくれることがあってはならない。
天皇陛下は、戰いに
ご自身ではお出にならず、
互いに人の血を流し、
山野の獸道で死ねと、
死ぬ事を人の名誉などと、
彼の御心が深いのならば
そもそもそんなことを思うことがあるのでしょうか。
ああ弟よ、戦いで
君が死んでくれることがあってはならない。
去年の秋にお父さまに
遅れなさったお母様は、
嘆きの中で、痛々しくも
わが子を招集されても、家を守り、
安泰だと聞く今の天皇陛下の大御代のはずが
母のしら髮は増えている。
暖簾のかげに伏して泣く
か弱くて若い新妻を、
君は忘れたのか、思っているのか、
10ヶ月も一緒に暮らさず別れた
少女ごころを思ってみなさい、
この世でひとりで生きてきた君ではない
ああまた誰を頼ればいいのか、
君が死んでくれることがあってはならない。
                         
                                  

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